稚内駅の距離看板 その1
稚内駅には、以下のように7駅からの距離を示した看板がある。(Wikiには鹿児島駅からの距離標もあると書いてあるが、見た覚えもないし検索しても出てこない。)
(宗谷本線稚内駅 枕崎と友好結ぶ日本最北端の駅 - タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌- (fc2.com)より。撮影日は2016年9月2日とある。あと一駅は函館駅(703.3km)。)
この看板の距離は、いったいどのようにはじき出されているのか、気になったので考えた。
まず、直線距離ではありえない。稚内から3000㎞もあれば、北は北極海から南はマリアナ諸島まで到達してしまうから、指宿枕崎線の3駅が遠すぎることになってしまう。普通に考えれば、路線の距離だろう。宗谷本線は旭川駅を起点とし、終点稚内駅まで259.4㎞の路線であるから、看板の数字と一致する。札幌駅~旭川駅間は函館本線で136.8㎞だから、宗谷本線と合わせて札幌駅~稚内駅間は396.2㎞、これも看板と一致する。ここまでは順調だ。
しかし次、函館駅は問題である。距離は703.3㎞となっているが、函館駅から函館本線・宗谷本線経由で稚内駅までは、函館本線が423.1㎞なので計685.2㎞である。最短距離はこれではなく、長万部駅から岩見沢駅まで室蘭本線経由で、678.9㎞となる。どちらも看板の数字から20㎞近く短い。
では何が考えられるか。ひとつ前の看板の地点を経由することが条件だと考えてみる。函館駅から函館本線、室蘭本線、千歳線経由で札幌駅までの距離は318.7㎞なので、稚内駅までの距離は計714.9㎞となる。今度は約10㎞長くなってしまった。
さて、切符に詳しければこれで分かったかもしれない。上記の経路では、札幌駅から、函館本線と千歳線の分岐駅である白石駅までの経路が重複しているのである。つまり、この切符を普通に発券してもらうときは、
となり、札幌駅を経由しない。札幌駅には、このように函館本線旭川方面と千歳線を乗り継ぐ切符では、途中下車時に白石駅~札幌駅の料金精算が必要という注意書きがいくつかある。ということで、「函館駅~長万部駅~沼ノ端駅~白石駅~旭川駅~稚内駅」の切符の距離がどうなるかというと、714.9㎞から札幌駅~白石駅5.8㎞の往復分を差し引いて、703.3㎞。これで看板の距離と一致した。
次は東京駅だが、新幹線経由で東京駅から新函館北斗駅まで、営業キロで862.5㎞(東京駅~盛岡駅535.3㎞+盛岡駅~新函館北斗駅327.2㎞)、これに上記の函館駅までの距離を足したうえで、函館駅から新函館北斗駅までの17.9㎞を差し引くと、862.5㎞+703.3㎞-17.9㎞=1547.9㎞。これもちょうどだ。
東海道本線(東京駅~神戸駅)589.5㎞+山陽本線(神戸駅~門司駅)534.4㎞+鹿児島本線(門司駅~新八代駅)224.0㎞+九州新幹線(新八代駅~川内駅)91.5㎞+鹿児島本線(川内駅~鹿児島中央駅)46.1㎞+指宿枕崎線(鹿児島中央駅~指宿駅)45.7㎞=1531.2㎞
これに東京駅から稚内駅までの1547.9㎞を足すと、3079.1㎞。看板の数字(3057.4㎞)より21.7㎞長い。
ここで、所謂「岩徳線ルール」を考える。山陽本線岩国駅~櫛ケ浜駅65.4㎞を通過する切符は、内陸を通る岩徳線43.7㎞経由として運賃計算するルールがある。これを適用すると、65.4㎞-43.7㎞=21.7㎞減らせる。これで、指宿駅までの距離も合致する。。
さらに、指宿駅から西大山駅までは11.0㎞、指宿駅から枕崎駅までは42.1㎞なので、これらを足した数字も看板と一致する。
さて、なぜ本ブログでこれを取り上げたのかと言うと、この距離看板は掛け替えられているからである。
(宗谷本線往復旅2011(その7:稚内駅・防波堤ドーム) - 【改装中】切符、食、時々長旅。@はてな (hatenablog.com)より。撮影日は2011年9月18日とある。)
いつからこの看板を掛けるようになったのかは知らないのだが、遅くとも2011年9月にはあったことがこれで確認できる。そして、東京以遠の距離が、2016年撮影のものよりも26.6㎞短くなっていることがわかる。
この距離の差は何か。それは、2016年3月26日の北海道新幹線部分開業によるものである。これ以前、新青森駅~新函館北斗駅(当時は渡島大野駅)の経路と距離は以下のようであった。
新青森駅(奥羽本線3.9㎞)青森駅(津軽線31.4㎞)中小国駅(海峡線87.8㎞)木古内駅(江差線37.8㎞)五稜郭駅(函館本線14.5㎞)渡島大野駅 計175.4㎞
それが、新幹線開業により、以下のようになる。
175.4㎞-148.8㎞=26.6㎞
この距離はJR線のみから算出しているのがここからもわかるので、この看板の数字はある意味記録なのである。
ところで、この経路、何を基準にしているのだろうか。札幌駅までは特急「宗谷」、そこから函館駅までは特急「北斗」、新函館北斗駅で乗り換えて東京駅までは「はやぶさ」、そこからは「のぞみ」「みずほ」と指宿枕崎線だろう。JR線だけを経由している=並行在来線を使っていないこともわかる。そして、既述の通り営業キロ(/=実キロ・換算キロ等)を用いている。
しかし、普通に考えれば、青森から山口の最短経路は日本海経由になるのではないか。あるいは、実キロで考えると東京(太平洋)経由の方が短いのか。
そこで、次は「各駅からの本当の距離」はいくつなのかについて考える。
つづき